みなさんこんにちは 😊
8月15日の終戦記念日を前に、直接的に戦争に関わるお話ではないのですが、太平洋戦争により、ポーランドから移民となってアメリカへ渡った少女「ワンダ」が主人公の物語をご紹介します。
貧困・人種差別・いじめといった重たいテーマを含んでいますが、石井桃子さんの改訳で、理解しやすい優しい日本語で綴られています。
物語は…
ワンダ・ペテロンスキーは13番教室の一番端の列の後ろから2番目の席に座っています。
こう始まります。この一文だけで、ポーランド移民であるワンダが差別を受けていることを感じます。「なぜ?」読者はすぐに引き込まれます。
ワンダは学校からほど遠い薄暗い貧困地区に住んでいます。
物静かでほとんど笑顔も見せません。
女の子たちが美しいワンピースの話しで盛り上がっている中、ワンダは「100枚のドレスを持っている」と言います。毎日同じ、しわしわの青いワンピースを着ているのに…。
それから、クラスメイトのペギーが主犯となり、マデラインと一緒に「ドレスごっこ」と称したワンダへの執拗ないじめが始まるのです。
マデラインは、いじめはやめようとペギーに手紙を書きかけますが、次の標的は自分になるかもしれないという恐怖から、手を止めてしまいます…。いじめを傍観する葛藤の日々を送る中、ワンダはある日を境に姿を現さなくなり、担任から、いじめを機に引っ越しをしたと告げられます。
そして、ワンダの言う「100枚のドレス」の真実を知ることとなります。
マデラインは直接謝りたいと行動を起こします。主犯のペギーと共に。しかし、ペギーは「ワンダは利口じゃないから、からかわれていることなんか気が付かないんだと思ったの。」と、言うのです。この衝撃的な言葉が、心に深く棘を刺し、苦しくてたまらない。自分でやってしまったことをどこか正当化している。子どもなりに罪の重さを感じて現実逃避しているのか。
取り返しのつかない後味の悪さ。
作者のエレナー・エスティンは包み隠さず人間心理を突きつけて来ます。
だからこそ生まれる読者への問題提起。
登場人物それぞれの繊細な心情が手に取るように伝わります。
この物語の疑似体験は、大人が口を揃えて言う「いじめはしてはいけない。」という言葉よりも、遥かに子どもの心に訴えかけることでしょう。
子どもだけではありません。大人にも読んで欲しいと強く願う一冊です。
夏休み、一日に数ページずつでも親子で読んでみてはいかがでしょうか?
文責:田場 依子
作/エレナー・エスティス 訳/石井桃子 絵/ルイス・スロボドキン 岩波書店 1954年初版 2006年改訳
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